少しドアを開けて、理沙ちゃんにぶつからないようにタオルで隠した身体を押し込む。
理沙ちゃんが身体に掛けたお湯の飛沫が脚に温かい。
白い背中が、お湯に濡れて蛍光灯の明かりに輝いているのが目に飛び込んでくる。
「理沙ちゃんちのお風呂って、こんな感じだったっけ?」
「うん。そうだけど・・・まぁ、絢と一緒にお風呂入ったのなんて昔だから、覚えてないよね。」
浴槽に入った理沙ちゃんは、浴槽の縁においた両腕の上に顎を置いて、私を見上げる。
「先に身体洗っちゃってよ。そこに掛かってるの、わたしのだから。」
「あ、うん。ありがと。」
理沙ちゃんが指差したスポンジタオルを手に取り、お湯を浴びてからいつもより丁寧に身体を洗う。
このスポンジタオル、理沙ちゃんが使ってるのなんだ・・・。
なんかちょっと、嬉しい。
シャワーを出そうとして右を向くと、理沙ちゃんが嬉しそうにこちらを見ていた。
「理沙ちゃん?あんまり見たら、恥ずかしいよぉ。」
「だって、真正面に絢がいるんだもん。見るでしょ?」
恥ずかしいけど、その幸せそうな笑顔に怒る気など湧くはずも無い。
身体を流してから髪を留めるゴムを解き、充分に湿らせた髪を洗う。
一度意識してしまうと、どうしても理沙ちゃんの視線が気になって何度か目が合ってしまう。
「髪長いのって、洗うの大変なんだねー。」
ポツリと理沙ちゃんがつぶやく。
「慣れてるから気にはならないけど。理沙ちゃんは短いから、すぐ乾きそう。」
「まーね。汗かいたときとか、こっちの方が洗うの楽だしね。」
私が髪をシャワーで流すと、理沙ちゃんが洗顔フォームのチューブを渡してくれる。
「理沙ちゃん、のぼせてない?一旦替わる?」
私がそう言うと、理沙ちゃんは笑って答える。
「大丈夫。わたし、お風呂入ったままボーっとしてて1時間とかよくあるから。」
「へぇー、そうだったんだ。ちょっと意外。」
顔を泡だらけにしながら感心する。
「でも、普段は大体15分くらいで足りるけどね。」
「えぇっ!それはちょっと速過ぎない?」
「そうかな?じゃ、これからやってあげるよ。」
私が顔を洗い終えてシャワーを探していると、理沙ちゃんが出してくれて助かった。
入ってくるときに持ってきたタオルで顔と髪を拭いて、そのタオルで髪を包んで頭の上にまとめる。
「お待たせ、理沙ちゃん。」
私が差し出した手をつかみ、全身がピンク色に染まった理沙ちゃんと場所を替わる。
全身の引き締まったライン、その割に大きな胸、滑らかな肌、羨ましいくらいカッコイイ。
「ん?どうかした?」
すれ違いざまの私の視線に気づいて、理沙ちゃんが尋ねる。
「え、ん、ううん。なんでもない。」
私はゆっくりと浴槽に浸かり、壁に頭をつけて足を伸ばすが、ちょっと伸びきらず膝が曲がる。
小さく溜息をついて左を見ると、既に理沙ちゃんが凄まじい勢いで身体を洗っていた。
あまりの速さにあっけに取られていると、手桶のお湯を頭から被ってそのまま頭も洗い始める。
腕の動きにつられて泡だらけの胸がふるふると揺れるのに、つい目が行ってしまう。
気を取られてるうちに顔まで洗い始めて、全身くまなく色んな泡に包まれた理沙ちゃんは、
一気に頭のてっぺんからシャワーを浴びてそれらを落としていく。
は、速い・・・。
あんなに乱暴に洗ってるのに、どうして理沙ちゃんの髪はキューティクルがしっかりしてるんだろう。
「どう?速かったでしょう?」
タオルでわしゃわしゃと髪を拭き終えて、自慢げな理沙ちゃんがニカッと笑う。
「う、うん・・・びっくりした。」
「えへへ。わたしも入っちゃおっと。」
理沙ちゃんは壁にタオルを掛けると、左足を浴槽に入っている私の奥に差し込む。
私の目の前を理沙ちゃんの股間が横切り、そのまま腰を沈めて向かい合わせに膝の上に座ると
お湯が一気に溢れ出し、もうもうと湯気が立ち込める。
微笑む理沙ちゃんの顔が私とすれ違い、肩の上に顎が止まった。
理沙ちゃんの柔らかい胸が私の胸にふわりと重なって、二人同時に小さく溜息を漏らす。
血行の良くなった白い背中がピンクに染まって、ふわふわと呼吸に揺れている。
お湯の中での優しい重さと、しっとりした肌の感触が、染み込んで来るような幸せに変わる。
私も理沙ちゃんも、しばらく喋らずにその感覚に酔いしれる。
限られた時間を贅沢に過ごすのは、とても幸せなことだと感じながら。