「うわぁぁぁっ!!絢!絢ぁ!!起きてっ!!!」
何かが叫ぶ声が聞こえて、ゆっくりと目を開ける。
そこには、大慌てした時計が理沙ちゃんとにらめっこしていた。
いや、逆だ。
「か、帰ってきちゃうっ!!」
カカエッテキチャウ・・・
低血圧な脳がその意味を理解するのに、たっぷり7秒掛かった。
「えっ!!ウ、ウソ!!!」
掛けられていた布団を跳ね上げて身体を起こし、脳もパニックを起こす。
「あ、あ、ど、どうしよ・・・」
起き抜けからの一大事に、昨夜ふやけきった頭はどうにも追いつかない。
「とりあえず服!お風呂場に置きっぱなしだから!」
ビシッと理沙ちゃんが指差したドアを開け、私は素っ裸で階段を駆け下りた。
時刻は、既にお昼を過ぎていた。
程なくして理沙ちゃんのご両親が戻られて、なんだか居づらくなってしまい、私たちは
『私を送ってくる』と言う名目で外に出た。
12月の寒風が、繋いだ手以外を震わせる。
「ねぇ、理沙ちゃん。雪、降らなかったね。」
私の家の方向へ、誰も居ない道を二人で歩く。
「そうだね・・・ま、しょうがないよ。」
なまじ期待していただけに、少し残念。
「来年のクリスマスは、降るといいね。」
私の顔を覗き込みながら理沙ちゃんが微笑む。
「うん。そのときも、絶対一緒だよ。理沙ちゃん。」
「当たり前じゃん。約束だよ。絢。」
「うん。約束。」
小指の代わりに、口付けを交わす。
見つめ合って、微笑んで、私たちはまた道を歩き出した。
二人で、一緒の道を。
Fin