ぐ、ぐぎゅるるるる〜〜〜
海佳の動きがぴたりと止まり、一瞬で顔が真っ赤になる。
「ぷっ。」
噴き出した私は、そのまましばらく笑い続けてしまう。
一方、警報音を発してしまった海佳は、ばつが悪そうに口を尖らせる。
「あっはははは。そっか。もうそんな時間だったね。」
海佳は私の上から降りて、納得いかない表情のままお腹をさする。
「むうぅ〜。いい雰囲気だったのにぃ。あたしのばかー。食いしん坊ー。」
その流れがもったいなくて、私もしばらく起き上がらないでいたけど、
育ち盛りなんだから仕方ないよ。海佳。
さて、じゃ、近くのファミレスにでも・・・
むくりと起き上がると、急に頭も冴えてくるもので、海佳の帰宅時間が気になってしまう。
「夕飯食べたら、気をつけて帰るんだよ。」
残念な気持ちを引きずりながら言う私に、アヒル座りの海佳のきょとん顔が飛び込んでくる。
「え?何で帰るの?」
は?
何で帰るのって、何で?
返答の意味が全く分からず、頭の上に?マークを量産する。
「泊まって行くに決まってるじゃなーい。それとも、夜道を一人で帰らせるつもりだったの?」
マジデ・・・
最初からそのつもりだったなら、言ってくれればいいのに・・・一人がっくりとうなだれる私をよそに、海佳の一人芝居は続く。
「お姉ちゃんひどい〜!さっきあそこまでしておいて、わったしをもれあそんだのねー!」
ちょっと噛んだ。
可愛い・・・
「もう・・・お父さんもお母さんも、ちゃんと知ってるんでしょうね?」
私の許容とも取れる返答に、海佳はニヤリと悪い微笑を浮かべる。
「もっちろん。鞄には・・・ホラ、着替えも歯磨きセットもバッチリ!」
うんしょと鞄に這い寄って、会心の笑みで中身を見せる。
終業式に荷物検査が無くてよかったね・・・
「そっか。じゃ、いいよ。全く、言ってくれればよかったのに。」
「言うタイミング無かったもん。」
小さく頬を膨らませる海佳。その表情も久しぶりで嬉しい。
「さて、じゃあ、何か食べに・・・」
そう言った矢先、玄関の呼び鈴がピンポーンと軽い音を立てた。
「ちょっと待ってて。あ、出かける支度しておいてね。」
はーいという間延びした返事を背中に受けながら、部屋を出て玄関へと小走りで辿りつく。
普段尋ねてくる人など、そう多くは無い。宅配便が来る様な買い物はしてなかったはずだけど・・・
念の為、ドアスコープで外を確認してから、チェーンを外す。