Auf heben その21

「うわぁぁぁっ!!絢!絢ぁ!!起きてっ!!!」
何かが叫ぶ声が聞こえて、ゆっくりと目を開ける。

そこには、大慌てした時計が理沙ちゃんとにらめっこしていた。
いや、逆だ。

「か、帰ってきちゃうっ!!」
カカエッテキチャウ・・・
低血圧な脳がその意味を理解するのに、たっぷり7秒掛かった。

「えっ!!ウ、ウソ!!!」
掛けられていた布団を跳ね上げて身体を起こし、脳もパニックを起こす。
「あ、あ、ど、どうしよ・・・」
起き抜けからの一大事に、昨夜ふやけきった頭はどうにも追いつかない。
「とりあえず服!お風呂場に置きっぱなしだから!」
ビシッと理沙ちゃんが指差したドアを開け、私は素っ裸で階段を駆け下りた。

 

時刻は、既にお昼を過ぎていた。
程なくして理沙ちゃんのご両親が戻られて、なんだか居づらくなってしまい、私たちは
『私を送ってくる』と言う名目で外に出た。

12月の寒風が、繋いだ手以外を震わせる。
「ねぇ、理沙ちゃん。雪、降らなかったね。」
私の家の方向へ、誰も居ない道を二人で歩く。
「そうだね・・・ま、しょうがないよ。」
なまじ期待していただけに、少し残念。

「来年のクリスマスは、降るといいね。」
私の顔を覗き込みながら理沙ちゃんが微笑む。

「うん。そのときも、絶対一緒だよ。理沙ちゃん。」
「当たり前じゃん。約束だよ。絢。」
「うん。約束。」
小指の代わりに、口付けを交わす。

見つめ合って、微笑んで、私たちはまた道を歩き出した。

二人で、一緒の道を。

 

Fin

 

 

 

 

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