Beams その22


「まだ顔の前がスースーするけど、メガネ外してこんな事言えるの、まゆだけ。
やっぱり・・・あたしにとっても、まゆは特別。」
照れくさそうに、でもしっかりボクを見つめて千河は微笑んだ。
「千河・・・」
ボクは再び身体を預けてきた千河を、しっかりと抱きとめる。
ボクだってそうだよ、千河。
千河以外に、特別なこの感情は起きない。

「まゆ。好き。大好き。」
言い終わる前に千河は目を閉じて、少し背伸びしながらボクに口付けた。
グロスに覆われた唇は、見た目のつやぷるに反してこの前の感触より少し硬い。
でもそこから伝わる気持ちは、この前よりも遥かに熱い。

「ボクも・・・好・・・き・・・?」
唇が僅かに離れて、そう呟いた時。
千河が更に踏み込んできて体勢を崩してしまい、語尾が上がってしまった。
幸いにも倒れた先はベッドで、柔らかく弾んだマットにボク達はしっかりと受け止められた。
背中よりも、千河が乗っかってぶつかった方が痛い。

「ねぇ、まゆ?」
ボクの上に覆い被さるような体勢になった千河が、表情を消してポツリと言った。
「あたしはメガネ外した顔見せたんだから、まゆも見せてよ・・・」
千河が、何を言っているのか解らなかった。
ボクはメガネなんかしてないし、何の事を言っているのかな?
そんな渦巻く思考の中で、ボクは辛うじて「え、何を?」とだけ返すことが出来た。

「は・・・裸・・・」
ボクの胸の上に顔を置いたまま、なんとかボクの耳に届いた微かな声。

え・・・?

えええぇぇぇ!?

「聞き間違え・・・じゃ、ない、ん、だよね?」
真っ白な天井が、ぐるぐるとボクの目の前で揺れだしたように感じる。
「そ、そうよ・・・あたしにとってメガネ外すってゆーのは、それくらいの事なんだから・・・」

こ、これって、まさか・・・?
お、お、お、落ち着け! ボク!!
こ、これも特別な友達としてアリなのかな!?
戸惑ったままボクが答えられないでいると、千河がもそりと顔を上げる。

「それに、こんな時でもなかったら頼めないじゃない・・・ね、お願いっ!」
いつもとは逆の、見たこともない方向に眉を下げた千河が放ったブースト哀願ビームが、ボクを射抜いた。
真剣で、素直な気持ち。
それは、ボクが上辺だけで放つビームとは『意味』が違った。
そんな千河の気持ちに、ボクは応えてあげたいと思う。

「うん・・・いいよ。 千河になら・・・見せてあげる。」
その一言に、千河がゆっくりと身体を起こして逆光を背負う。
今までボクだけのものだった『真結花』を、今初めて、ボクはひとに見せてもいいと思った。
「ほんとに?」
チークを入れてないのに、千河の頬は真っ赤だった。
「うん・・・」
きっとボクもそうに違いない。

「あたしが脱がせた方がいいのかな?」
「うん。千河がそうしたいなら、いいよ。脱がせて。」
ボクはベッドに倒れこんだ姿勢のまま、ちらりと視線を投げてきた千河に首だけ起こして微笑む。
「じゃ、じゃぁ・・・」
馬乗りになった千河が、恐る恐るボクのリボンタイに手を掛けてくる。
どうしていたらいいのかわからなくて目を閉じると、襟の下でシュルシュルとタイが動く感じがした。
それからブラウスのボタンが上から一つずつ外されていく度に、ボクの鼓動が強さを増していく。

「まゆ・・・身体、起こして?」
いつもの千河とはまるで違った優しい声に、ボクはうっすらと目を開けながらそれに従う。

 

 

 

 

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