Look at me その18★


廊下で出会う者も無く、私と瑠奈さんは中庭に辿り着いた。
夜とはいえ、7月の空気は暑いけれど、時折吹く風が薔薇の木の間を吹き抜けて心地よい。
「いい風ね。瑠奈さん。」
ウッドデッキのテーブルにトランクを載せ、椅子に掛けた私は脚を組んで瑠奈さんを見上げる。
「は、はい・・・わたくしも、そう存じます。」
羽織ったバスローブの胸元を握り締め、緊張の面持ちを私に向ける瑠奈さんに、私はそれを脱ぐよう命じる。

空間の四隅に配置された電球色の明かりに照らされながら、瑠奈さんは自らの身を夜風に晒す。
「どう、瑠奈さん。やはり昼間とは印象が違うものね。」
周囲に視線を巡らせてから、正面に立つ瑠奈さんの手を取る。
家事をしている瑠奈さんの手はキチンと手入れされ、青く走る血管が白い肌に透けて見える。

「さぁ、瑠奈さん。後ろを向いて膝をついて頂戴。」
「畏まりました・・・」
その場で向きを変えて屈む瑠奈さんとは逆に、私は立ち上がってトランクの中からアイマスクを取り出す。
一度頭を撫でてから、メガネのような形状のつるを持つアイマスクで瑠奈さんの視界を塞ぐ。
「ガーデンの印象が昼間と違うか答えてくれないんですもの。見えなくていいわよね。」
肩に手を掛けて耳元で囁くと、瑠奈さんは慌てたように反論する。
「い、いえ、そんなつもりは・・・」

目の前にある瑠奈さんの背中は、同性の私が見ても美しいと感じてしまう。
日々の仕事で適度に鍛えられた後姿はバランスが良く、それでいて女性らしい細さと白さ。
私もスタイルは悪くないけど、果たして後姿はこんなに美しいものだろうか。
それを見ているうちに、ふつふつと湧き上がる衝動。私はそれを押さえたりはしない。

パチィンッ!
瑠奈さんの口から、短い悲鳴が迸る。
「あら、瑠奈さん。あまりに素敵な身体だから、蚊が止まろうとしていたわ。」
自らの台詞に、ドキドキと鼓動が高まってきてしまう。
「た、退治して頂いてありがとうございます・・・」
じわじわと背中に手形が浮かび上がってくる瑠奈さんの背中に、優しく唇を寄せる。

「信じるの?叩きたかっただけかもしれないわよ?」
項を爪で撫でると、瑠奈さんの身体がひくんと震える。
「信じます。お嬢様が仰られたことですから。」

私の背筋を、快楽にも似た電流が走り抜ける。
その言葉自体が嘘でも演技でも構わない。その忠誠に、私の心が昂ぶってしまうのだ。
「嬉しい。ありがとう。瑠奈さん。」
おぶさるように瑠奈さんの背中に上体を預け、ブラを上にずらして露になったおっぱいを強めに鷲づかむ。
「あっ・・・うっ・・・」
柔らかく豊かなおっぱいは私の手の中で形を変え、伝わる鼓動が少しづつ速くなってくる。
顎だけで、瑠奈さんの髪に隠された耳を探り出して舌を這わせる。
「んっ・・・く、くすぐったいです・・・」
甘くなり始めた声を発する瑠奈さんの乳首を掌で転がすと、すぐに反応が返ってくる。

「ふふ。気持ちいいんじゃなくて、くすぐったいの?」
「あっ、そっちは、気持ちイイです・・・」
夜着を伝わる背中の上下動が、少しずつ速くなってきた気がする。
「そう、よかったわ。じゃぁ瑠奈さんの心を、縛ってあげる。」

私は近くに咲いていたクイーンエリザベスの花を2輪摘み、瑠奈さんの両肩に乗せた。
「あはは。本当に薔薇が咲いたみたいよ、瑠奈さん・・・素敵。」
ゆっくりと椅子に戻り、背を向けたままの瑠奈さんを眺めながらトランクを開ける。
「あ・・・お嬢様・・・」
不安定に置かれた薔薇は、瑠奈さんの荒い呼吸にゆらゆらと揺れる。
「瑠奈さん。その薔薇、絶対に落とさないで頂戴ね。」

カチャッ・・・
スライドを引く動作だけは、本物同様で物騒この上ない。
エアガンの照準を瑠奈さんの右肩の薔薇に合わせて、私は、引き金を、引いた。

 

 

 

 

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