「まだ顔の前がスースーするけど、メガネ外してこんな事言えるの、まゆだけ。
やっぱり・・・あたしにとっても、まゆは特別。」
照れくさそうに、でもしっかりボクを見つめて千河は微笑んだ。
「千河・・・」
ボクは再び身体を預けてきた千河を、しっかりと抱きとめる。
ボクだってそうだよ、千河。
千河以外に、特別なこの感情は起きない。
「まゆ。好き。大好き。」
言い終わる前に千河は目を閉じて、少し背伸びしながらボクに口付けた。
グロスに覆われた唇は、見た目のつやぷるに反してこの前の感触より少し硬い。
でもそこから伝わる気持ちは、この前よりも遥かに熱い。
「ボクも・・・好・・・き・・・?」
唇が僅かに離れて、そう呟いた時。
千河が更に踏み込んできて体勢を崩してしまい、語尾が上がってしまった。
幸いにも倒れた先はベッドで、柔らかく弾んだマットにボク達はしっかりと受け止められた。
背中よりも、千河が乗っかってぶつかった方が痛い。
「ねぇ、まゆ?」
ボクの上に覆い被さるような体勢になった千河が、表情を消してポツリと言った。
「あたしはメガネ外した顔見せたんだから、まゆも見せてよ・・・」
千河が、何を言っているのか解らなかった。
ボクはメガネなんかしてないし、何の事を言っているのかな?
そんな渦巻く思考の中で、ボクは辛うじて「え、何を?」とだけ返すことが出来た。
「は・・・裸・・・」
ボクの胸の上に顔を置いたまま、なんとかボクの耳に届いた微かな声。
え・・・?
えええぇぇぇ!?
「聞き間違え・・・じゃ、ない、ん、だよね?」
真っ白な天井が、ぐるぐるとボクの目の前で揺れだしたように感じる。
「そ、そうよ・・・あたしにとってメガネ外すってゆーのは、それくらいの事なんだから・・・」
こ、これって、まさか・・・?
お、お、お、落ち着け! ボク!!
こ、これも特別な友達としてアリなのかな!?
戸惑ったままボクが答えられないでいると、千河がもそりと顔を上げる。
「それに、こんな時でもなかったら頼めないじゃない・・・ね、お願いっ!」
いつもとは逆の、見たこともない方向に眉を下げた千河が放ったブースト哀願ビームが、ボクを射抜いた。
真剣で、素直な気持ち。
それは、ボクが上辺だけで放つビームとは『意味』が違った。
そんな千河の気持ちに、ボクは応えてあげたいと思う。
「うん・・・いいよ。 千河になら・・・見せてあげる。」
その一言に、千河がゆっくりと身体を起こして逆光を背負う。
今までボクだけのものだった『真結花』を、今初めて、ボクはひとに見せてもいいと思った。
「ほんとに?」
チークを入れてないのに、千河の頬は真っ赤だった。
「うん・・・」
きっとボクもそうに違いない。
「あたしが脱がせた方がいいのかな?」
「うん。千河がそうしたいなら、いいよ。脱がせて。」
ボクはベッドに倒れこんだ姿勢のまま、ちらりと視線を投げてきた千河に首だけ起こして微笑む。
「じゃ、じゃぁ・・・」
馬乗りになった千河が、恐る恐るボクのリボンタイに手を掛けてくる。
どうしていたらいいのかわからなくて目を閉じると、襟の下でシュルシュルとタイが動く感じがした。
それからブラウスのボタンが上から一つずつ外されていく度に、ボクの鼓動が強さを増していく。
「まゆ・・・身体、起こして?」
いつもの千河とはまるで違った優しい声に、ボクはうっすらと目を開けながらそれに従う。