Beams その7


その夜−

「ふー。いいお風呂だったなー。」
タオルを首に掛け、乾かし終えた美しいキューティクルの長い髪をたなびかせて自室へ戻る。
宿題はないし、明日の準備も終わってる。
テレビでも見るかな・・・
そう思ってリモコンを手に取ろうとしたとき、ふとベッドの上に視線が移り、放っぽっていたケータイに
メールが着信していることに気づく。

メールは3件。マックの割引クーポンと、あられと千河だ。
クーポンはどうでもいいとして、あられのデコ満載メールには適当に返答しておく。
盛り沢山のアニメーション付きキャラクターたちが、自分勝手ばらばらに蠢いていて非常に目障りだ。
それよりも、2番目に着信していた千河のメールに、ボクはゆっくりと目を通す。
そこには、文字だけのシンプルな文面でこう書かれていた。

『まゆ 来週、誕生日だったよね。 ちょうど土曜だし、暇だったらちょっと付き合ってあげようかと思って。
返答、急がなくていいから。よろしくね。 千河』

千河・・・
千河にはこんなメール似合わないよ。
もっと当日とかにツンツンしながらボクを引きずって行く方が似合う。
そんな光景を想像して思わず苦笑してしまう。
千河から誕生日祝いだなんて中2の時に1度あったきりで、そのときは確か、振るだけで芯が出る
ちょっと高級なシャープペンシルをくれたんだったよね。

ねぇ、千河・・・覚悟決めたりしてないよね?
少し懐かしい思い出が頭を過ぎったからか、そんな不安が込み上げてくる。

そう、不安だ。
もし千河がそんな気を起こしたら、ボクは拒めるだろうか。
白い画面を見詰めながら、もしもの話を噛み締めるように、自分に問いかける。

「や〜めた。」
ありもしないことを延々考えるなんて、ボクらしくない。
とにかく、明日の登校中からでも探りを入れてみよう。
どうせ千河の事だから、すぐにボロを出すだろうし。
そう言い聞かせたものの、半ば祈るような気持ちでボクはケータイを閉じた。

「ふぅ・・・さてと。」
小さく伸びをしてからカーテンを閉める。
テレビを見る気などすっかり無くしてしまったので、何日かに一度のボディチェックをすることにした。
朝は毎日見るだけだけど、たまに触って確かめておけば美しさの自覚も強くなると言うもの。
それに何度見ても飽きないしね。

ボクの部屋の奥には、天井まで届くほど大きな鏡がついた鏡台がある。
およそ部屋のサイズとは不釣合いな大きさのこの鏡は、ボクにとって欠かせないもの。
ベッドから降りてその前に立つと、お風呂上りでどことなく艶っぽい色気を放つボクと目が合った。
ドクンと鼓動が一つ跳ね上がる。

髪が絡まないように首からタオルを外し、春らしいグリーンのパジャマのボタンを一つずつ外す。
ズボンも脱ぎ、アイボリーのインナー姿で腰に手を当ててポーズを決める。
何度も角度やポーズを変える度に、鏡の中の美しいボクと視線がぶつかる。
「ふふっ・・・」
自然と唇の端が持ち上がってしまい、ポーズにも大胆さが取り込まれてくる。
そして気分が高揚してきたボクの手は、ゆっくりとナイトブラの脇に伸びていく・・・

 

 

 

 

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