Jack-o'-Lantern comes to her e   その5★

 

 

そうか、これが押し倒されるって言う事なのね。
頭の中で妙に冷静な分析結果が出たと思ったのも束の間、すぐに私の感覚は唇に集中してしまう。
人前ではキスをしない。
そんな取り決めをしたから、今は、ちょっと理美ちゃんも情熱的になってるのかもしれない。
柔らかい唇の後ろから、硬い物で押し付けられる感じ。
私の両肩に手を掛けて全体重を預けながら、何度も口付けを交わす。

「ん・・・氷音先輩。 んっ・・・」
「ん、理美ちゃん。 ちゅ。」
目を閉じているからか、たまに位置がずれて、上唇や唇の下にまで理美ちゃんの唇が降ってくる。

「はぁ・・・ あかん、好きや、氷音先輩、止まられへん。」
高価なガラス細工でも愛でるかのように、両掌で優しく私の頭を支えながらキスが繰り返される。
こんなに鼓動は速いのに、脳が微睡にも似た感覚に溶けて行く。
「理美ちゃん、んっ、いいよ。 今は二人だけだから、好きなだけ、いいのよ。」
全身に掛かる理美ちゃんの体重を感じながら、ほんの僅かな、永劫とも思える時間を二人で。
いつか来るであろうその時まで、私は、理美ちゃんと一緒に居たい。
理美ちゃんからもそんな想いが伝わって来て、胸の奥が苦しくて幸せに染まる。

「さぁ、氷音先輩。 ベッド行こか。」
すっかり蕩けた声で、理美ちゃんがちらりとこれから行く先へ視線を送った。
小さく頷く私の背中を起こして立ち上がり、腰に手を添えられながら背後にあるベッドの縁へ腰掛ける。

「ひひ。 氷音先輩、トリック・オア・トリートやで。」
「え・・・?」
ハロウィンの合言葉。
今こんな所で言われても、お菓子なんて持ってる訳がないし。
「どしたん? お菓子ちょーだい。」
私の面くらった表情を楽しんでいるのか、理美ちゃんがかぼちゃの目の奥に宿る蝋燭の炎のように、悪い笑みを
揺らめかせながらこちらを見上げる。
「そんな、今は、無いわよ・・・」
スイッチの入った頭で機転の利いた答えなんて出てくるわけも無く、ただ素直なだけの言葉が出てしまった。

「そっかー。 なら、しゃーないよなー。」
きっと理美ちゃんは私がこう答える事なんてお見通しだったに違いない。
わざとらしくそう言われ、私のメイド服の背中のファスナーが下ろされて行く。
「え、あの・・・」
「にひ。 トリックや。」
左側に座っている理美ちゃんの右手が、開いた背中に滑り込んできて器用にブラのホックを外す。

「氷音先輩、寝る時もブラして寝るん?」
お風呂から上がったばかりで温かい掌が、ふわりと私の背中を撫でる。
「いえ、普段はナイトブラだけど、今日は持ってきてないから。」
学校の鞄の容量の都合で諦めたそれをピンポイントで指摘され、なんとなくバツが悪い。
「そなんやぁ。 寝る時にしてたら苦しない?」
耳元で囁かれると、息が掛かってくすぐったい。
ただ、私にはなぜわざわざ理美ちゃんがそんな事を気にしてくれているのかが、理解できていなかった。
「まぁ、そうだけど、しないよりは・・・」
「脱いだ方がええんちゃう? 寝る時はリラックスできる恰好やないと、な?」
またしても、私は巧みな言葉の誘導に引っかかってしまい、ブラを脱がせる為か理美ちゃんがメイド服の袖から
腕だけを抜く。

「やだ、理美ちゃん、ちょっと、恥ずかし・・・」
ワンピースになっているメイド服の上半分が、私の太腿の上にくたりとその身を横たえた。
お医者さんに診せる時でも、ここまで脱いだ事は無いのに。
理美ちゃんの視線を遮るように、無意識に胸の前で腕を組んでしまう。

「え、うそ、氷音先輩!?」
驚いたような声を上げながら、理美ちゃんは片手を私の肩に添えながら、胸を守る腕に手を添えてくる。
「え・・・?」
「なんで氷音先輩、こんなにおっぱい大きいん!? 服着てたらそんな風に見えんのに!」
「そ、そんなこと・・・」
・・・なくはないのは、自分が一番よく知っている。
なのに、一目見ただけでそれを看破した理美ちゃんの言葉に、思わずガードが緩む。

「あーーもー! ずるい! 氷音先輩ばっかりおっぱい大きなって! ウチも欲しいぃ!」
「わ、私だって、なりたくてなったわけじゃ、あっ!」
勢い良く覆い被さって来た理美ちゃんを受け止める為、咄嗟にその肩を抱き締める。
でも、それも理美ちゃんの計算の内だってことに気が付いたのは、肩に掛けた私の手を理美ちゃんが私の肩の
横に押さえつけた時だった。

「ええなー、あやかりたいなー。」
理美ちゃんが、目を合わせたままゆっくりと、私の胸の谷間に顔を近づけて行く。


 

 

 

 

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