Massive efforts その26★


白いシャツの下から現れた健康的なお腹は引き締まっていて、あたしの視線を吸い寄せる。
その肌のところどころに、青黒く歪んだ個所や赤く腫れ上がった場所が痛々しく浮かんでいる。
「みっひー、ごめんね。」
シャツを頭から抜いたみっひーに、今日何度目かの謝罪の言葉を告げて、あたしはその痣をそっと撫でる。

「萌南。 もういい。 今日の事は、忘れるんだ。」
温かいパステルピンクのスポーツブラに、あたしの顔が抱き寄せられる。
規則的に穏やかなリズムを刻む鼓動が・・・直接あたしの頬に伝わってくるのが、心地よい。
「忘れない。 忘れないよ。」
「萌南、我が儘は言わな、んっ!」
みっひーの身体をよじ登って、呆れそうな言葉を吐きかけた唇を塞ぐ。

「みっひーがあたしを助けてくれた日を、忘れるわけないじゃん。」
見つめた瞳からは、先程の筋をなぞるように新たな雫が伝う。
「萌南。 ・・・ふっ、頑固者め。」
震えながら持ち上がった唇の端に、あたしは再び唇を押し付ける。
あたしよりも細くすら思えるのに、しっかりと筋肉の詰まったお腹を撫でながら、何度も口付けを交わす。

「はぁ・・・」
小さく息を吐いて、みっひーの唇の間に舌を割り込ませた。
歯に当たった感じがしたので、その先端で円を描いて鍵が開くのを待つ。
「ん・・・」
鼻から声にならない音が漏れて開いた門を、あたしの舌は待ち兼ねたように潜り抜ける。

「んはぅ・・・」
みっひーの舌の裏側に進入した舌を絡めて、一緒に踊ろうよと誘う。
一瞬引きかけたみっひーの頭は、もたれかかっていたベッドの側面に阻まれて逃げられない。
「ちゅ・・・みっひー、イヤ?」
「イヤ、ではない。 驚いただけだ、そんなキスは初めてだったから。」

あたしの縋るような表情を察したのか、みっひーの視線がほんの少し逸れた。
「そっか。 じゃぁ、他に痣残ってないか見てあげる。」
あくまでも口実を盾に、あたしはみっひーのブラの脇に手を滑り込ませる。
「ん・・・萌南、くすぐったい。」
そう言いながらも、みっひーは両腕を頭上に伸ばしてその先を促す。

あたしの手の中には、腕と、頭と、ポニーテールの先を抜けた温かいピンクの布地。
あまり苦労せず脱がせることが出来たのは、みっひーのおっぱいがあたしの小学校の時みたいだから、かな?
無意識にスポーツブラをみっつに折りたたんでベッドに置き、鎖骨の下にくっきりと浮かんだ痣を撫でる。
「ここもこんなに大きな痣・・・痛い?」
触ったら痛いかな?
でも心配だから、鳥の羽でかするように撫でるだけなら大丈夫だよね?

「強く押さなければ、痛くはない。 それに、この程度なら1日もあれば治る。」
「そんなに速くは治らないでしょ。」
心配させまいとして言ってくれてるんだよね?
そんな気遣いが嬉しくて、あたしは撫でていた指をそっとその下に巡らせる。

「ここは、触っても痛くない?」
掌に収まるほどの膨らみ越しに鼓動を感じながら、解りきった事を聞く。
「あぁ、大丈夫だ。」
だから、そんなに素直な返事しないでよ。
あたしがこれから何しようとしてるか、わかってる?

ぐるぐると渦巻く感情を胸の奥へと追いやるかのように、あたしは空いていた左腕をみっひーの背中に回して
もたれかかるように、カーペットの床に組み伏せた。
谷間、と呼ぶのを躊躇うほどの平野部に頬を押し当てて大きく息を吸い込むと、乾いた汗の甘い僅かな香りが
嗅覚を通してあたしの理性を突き崩す。
「萌南・・・甘え過ぎだ。」
困ったような声で、みっひーがあたしの理性を呼び止める。
「ダメ・・・?」
アイドリング状態のエンジンのようなあたしの鼓動は、みっひーのお腹に伝わってるのかな?

「ダメ、ではないが、汗臭いから、あまりかがない方がいい。」
ピッ、ピッ、ピッ、ポーン☆
ダメじゃないんだ。
あたしの中のシグナルが、ゴーサインを出した。

「みっひーの汗の匂い、なんか甘い感じがして、おかしくなりそうなの。 好き。」
左胸を優しく撫でながら、みっひーの首筋に舌を這わせる。
しょっぱい肌と、籠った熱に混じる汗とシャンプーの香りで、あたしの中心に切なさが湧き上がる。
「萌南、くすぐった・・・」
あたしの肩に添えられた手は、それでも押し退けようとはして来なかった。


 

 

 

 

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