Massive efforts その27★


とくん、とくん、と規則的だったみっひーの鼓動が速くなってきたように感じるのは、あたしの掌が心臓の
すぐ近辺をずっと撫でているからかな。
それとも、何度も唇を押し付けられた温かい肌が、さらに熱を帯びてきたからかな。
どっちにせよ、あたしがみっひーを愛してあげてる事に対する反応が感じられて、嬉しい。

「萌南、傷のチェックとは思えない手つきになって来たんだが・・・」
嫌がる訳でもなく、体をもじもじさせながらみっひーがあたしに囁きかける。
「あら、気が付いちゃった? ふふ、痛いの痛いのとんでけ〜。」
「んっ・・・そこは、痛くない。」
くるくる円を描くように乳首を指先でなぞると、みっひーはピクンと体を震わせて困った表情を投げ掛けてくる。

「そっか。よかった。 でも、みっひーのおっぱい可愛いから、もっとしてあげたい。」
周囲の皮膚の色と大差ない先端を指で摘みながら擦ると、あたしの耳元に切ない吐息が零れ落ちる。
「萌南・・・あぅ・・・」
初めて聞いたみっひーの艶っぽい声が、あたしの鼓膜を溶かして侵入し、脳内で躍る。
きゅんと胸の奥が締め付けられるみたいで、もっと欲しくなってしまう。

「あん・・・みっひー、可愛い声出ちゃったね。 素敵。」
両手の指先で転がされた乳首はすっかり硬さを得て、あたしからの更なる刺激を待ち望んでいるよう。
「萌南が、そんなこと、あ、するからぁ、だ。」
いつも凛々しい眉が角度を失い、あたしを見つめる瞳が揺らいでいる。
見た事の無い眼差しを投げ掛けられて、心の底から、熱い溜息を漏らしてしまう。

「こんなコトしたら、イヤ?」
逸る気持ちを抑え、あたしは耳たぶに舌を這わせながら最終確認をする。
かつて、あたしが嫌な思いをしたようなことを、みっひーに味わわせたくはないから。
「・・・萌南がしたいなら。」
ふるりと舌のくすぐったさから逃れるように頭を逸らしての答えは、思った通りだった。
「それ、ダメだよ。みっひー。」
予想できた答えだけに、それはすんなりとあたしの口から告げる事が出来た。
「あたしね、前に・・・そう答えて嫌な思いをした事があるの。」
みっひーの身体を強く抱きしめて、顔も見れないまま吐き出す。

「だから、みっひー自身にちゃんと答えを出して欲しいの。 ・・・えへ、よく分かんないかな、ゴメン。」
取り繕った笑顔には自然と涙が込み上げてきて、ぼやけたみっひーの顔が近づいてきたことに気付けなかった。

ちゅ、と、あたしの唇に重なるみっひーの唇。
「私は、萌南をそんな目に遭わせた奴の息の根を止めればいいか?」
目は優しく微笑んだ形のまま、急激にみっひーの身体が熱くなった気がして、あたしは慌てて首を振る。
「え、いやいや、違うの! ・・・もう、昔の事だから、それはいいんだけど、そうじゃなくて、みっひーが
望まないなら、あたしは、みっひーを傷つけるようなコトしたくないから・・・」
矢継ぎ早に言葉を重ねるも、しどろもどろになってしまったそれはずるずると力なく床に散らばる。

「優しいな。萌南は。 だから、もっと優しくしてくれるというのなら、私は安心して身を任せられる。」
直接的な表現をするのはやっぱり躊躇われるのか、少し目を逸らしながら慎重に選ばれた言葉が奥ゆかしい。
「うん。 みっひー。好き。大好き。」
嬉しい・・・
溢れる想いを『好き』という言葉に込めて、空いている左手の指をみっひーの右手の指と絡めて繋ぐ。

みっひーの熱い身体を抱き締め、あたしは重ねた唇の隙間から唾液を奪い取る勢いで吸い付く。
「ん・・・」
柔らかい唇のささやかな抵抗を打ち破り、口内に流れ込む僅かな液体を舌で受け止める。
「ちゅ・・・ちゅちゅっ・・・んっ・・・」
なだらかな稜線を描くおっぱいを掌でそっと辿ると、喉奥から零れた声があたしの舌へ受け渡される。
「はぅ、みっひー・・・」
貰った声に愛しさを上乗せして、舌から舌へとお返しする。
控えめに応じる動きを、あたしは巻き込むように大胆に引きずり出す。
それはまるで、友達を作らずにいたみっひーを、今の関係へと連れ出そうと伸ばしたあの時の掌のように。

「あ、はむ・・・も、萌南・・・」
名前を呼ばれてハッとなったあたしが目を開けると、すっかり潤んだ眼差しを向けるみっひーが、はぁはぁと
荒い息をつきながら顔を赤らめていた。
「あ、ごめん、みっひー。 苦しかった?」
撫でていたおっぱいの奥から掌に伝わる鼓動が、明らかに速くなっている事に今更気づく。
「いや、こんな気分になったのが初めてで、どうしたらいいのか分からないんだ。」
ぷしゅーっ!と、あたしの頭頂から蒸気が噴き出した。

みっひーがこんな表情するなんて、想像だに出来なかった。
「大丈夫、任せて。 ね?」
とっくにみっひーより速くなっている気持ちの加速を抑え、あたしは微笑んでキスの位置を顎へ、首へ、さらに
その下へと移す。


 

 

 

 

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