Rainy pink その4


ぐ、ぐぎゅるるるる〜〜〜

海佳の動きがぴたりと止まり、一瞬で顔が真っ赤になる。
「ぷっ。」
噴き出した私は、そのまましばらく笑い続けてしまう。
一方、警報音を発してしまった海佳は、ばつが悪そうに口を尖らせる。

「あっはははは。そっか。もうそんな時間だったね。」
海佳は私の上から降りて、納得いかない表情のままお腹をさする。
「むうぅ〜。いい雰囲気だったのにぃ。あたしのばかー。食いしん坊ー。」
その流れがもったいなくて、私もしばらく起き上がらないでいたけど、
育ち盛りなんだから仕方ないよ。海佳。

さて、じゃ、近くのファミレスにでも・・・
むくりと起き上がると、急に頭も冴えてくるもので、海佳の帰宅時間が気になってしまう。
「夕飯食べたら、気をつけて帰るんだよ。」
残念な気持ちを引きずりながら言う私に、アヒル座りの海佳のきょとん顔が飛び込んでくる。
「え?何で帰るの?」
は?
何で帰るのって、何で?

返答の意味が全く分からず、頭の上に?マークを量産する。
「泊まって行くに決まってるじゃなーい。それとも、夜道を一人で帰らせるつもりだったの?」

マジデ・・・

最初からそのつもりだったなら、言ってくれればいいのに・・・
一人がっくりとうなだれる私をよそに、海佳の一人芝居は続く。
「お姉ちゃんひどい〜!さっきあそこまでしておいて、わったしをもれあそんだのねー!」
ちょっと噛んだ。
可愛い・・・

「もう・・・お父さんもお母さんも、ちゃんと知ってるんでしょうね?」
私の許容とも取れる返答に、海佳はニヤリと悪い微笑を浮かべる。
「もっちろん。鞄には・・・ホラ、着替えも歯磨きセットもバッチリ!」
うんしょと鞄に這い寄って、会心の笑みで中身を見せる。
終業式に荷物検査が無くてよかったね・・・

「そっか。じゃ、いいよ。全く、言ってくれればよかったのに。」
「言うタイミング無かったもん。」
小さく頬を膨らませる海佳。その表情も久しぶりで嬉しい。
「さて、じゃあ、何か食べに・・・」

そう言った矢先、玄関の呼び鈴がピンポーンと軽い音を立てた。
「ちょっと待ってて。あ、出かける支度しておいてね。」
はーいという間延びした返事を背中に受けながら、部屋を出て玄関へと小走りで辿りつく。
普段尋ねてくる人など、そう多くは無い。宅配便が来る様な買い物はしてなかったはずだけど・・・
念の為、ドアスコープで外を確認してから、チェーンを外す。

 

 

 

 

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