Rainy pink その9★


除湿を続ける部屋に、二人の放つ熱だけが立ち上る。
薄目を開けたまま、海佳に何度も口付ける。
「ちゅ・・・ん・・・ちゅっ・・・」
海佳の下唇を口内に含んだり、上唇を舌で撫でたり、ただひたすら口で交わる。
「あむ・・・お、お姉ちゃん・・・キス、激し・・・」
そんな言葉さえも私は吸い込み、堅いエナメル質の間に舌を滑り込ませる。

「ん・・・んん・・・」
絡まる舌が、唾液のぬめりを泡立てながら脳の働きを鈍らせる。
歯の裏側や、唇と歯茎の間にも、満遍なく舌での愛撫を巡らせ、ひさしぶりの海佳を味わう。
「んはぁ・・・海佳・・・」
「お姉ちゃ・・・キスだけで、気持ちよくなってきちゃった・・・」
繋いだ手を離した海佳は、改めて私の背中に手を回してバスタオルを解こうと、肩甲骨の辺りに爪を立てる。
「あんっ・・・」
くすぐったさに身をよじる私を嬉しそうに見上げながら、海佳はそれをベッドの下に放り投げた。

電球色の明かりを受けた私の影が、海佳に張り付いている。
「お姉ちゃん、ステキだよ・・・」
「ありがと・・・」
私の背中は抱き寄せられ、また近寄った顔が勝手にキスをする。
その手は優しく、妖しく、パンにバターを塗るように丁寧な往復を繰り返す。
「海佳も、そろそろ暑くなってきたでしょ?」

花衣を纏っているかのような海佳のバスタオルの端を、はらりと解く。
均整の取れた身体は薄く筋肉を纏い、少し前の自分を錯覚させる曲線が瑞々しい。
ん・・・? 少し見ないうちに、ちょっとおっぱいが・・・?
妹の成長を微笑ましく思ってしまう自分に、少し照れてしまう。
「海佳、ちょっと胸大きくなった?」
「え・・・?お姉ちゃん、見ただけで分かるの!?」
ぱっと目を丸くする海佳に、私は耳元で囁く。

「分かるよ・・・だって、この前見てから随分経つもん。」
「そーだよね。お父さんもお母さんも全然出掛けないしね。」
小さく笑い合って全身を重ねながら抱きしめ合うと、お互いの熱が溶け出してしまいそうで切なくなる。
「じゃさ、今度ブラ買いに行こう。選んであげる。」
「うん。約束。」

ちゅっ、と小さく約束を交わしてから、私は海佳の耳に舌を這わせる。
実家にいたときから、同じボディーソープ、同じシャンプー、同じリンスで洗っているにも拘らず、
海佳の首筋から立ち上る熱にこもる香りは、私のものとは違う。
それを胸いっぱいに吸い込み、溜息として吐き出しながら唇と舌で鎖骨を辿る。
「ん・・・」
海佳の肩がぴくんと震えて、私の背中を抱く腕が一瞬、止まる。
「ふふ・・・海佳、可愛い。」
その反応が愛おしくて海佳の唇を舌で撫でると、その先端を吸い込むように自らの口内に誘い込む。

「ん!」
驚く私に目だけで勝利を伝える海佳は、口の動きだけで私の舌を弄ぶ。
ぴちゃぴちゃと絡まりあう舌から漏れる音が、更に私を熱くさせる。
「ん・・・はぁう・・・」
「ひ、ひかぁ・・・」
溢れ出した切なさをぶつけるように、全身をくねらせて海佳の身体を愛撫する。
繋がっていた舌は離れ、ぽたりと自分の顎に銀色の雫が滴り落ちると、嬉しそうにそれを舐め取る海佳の
表情の妖しさに鼓動が跳ねる。
「海佳、顔エロいよ?」
そう微笑んだ私こそ、どんな表情をしていたのだろう。

「だって、嬉しいもん。お姉ちゃんとセックスできて。」
スイッチの入った海佳は平気でこういう単語を言う。
それはきっと、私がそういう言葉に恥ずかしさを感じるって知ってるから。
急激に顔が熱くなってくるのを自覚すると、接近していた海佳の顔が小悪魔の笑みに歪む。
「ふふ。お姉ちゃん、一気に顔赤くなった。興奮したの?」
私の背筋を爪で愛撫する海佳の身体の上で、私は体を震わせてしまう。

「もう・・・そんなこと言うから・・・」
「セックス、って?」
少し首を上げて、敢えて私の耳元で囁くその媚薬は、確実に私の脳を犯しだす。
「み、海佳ぁ・・・」
そんな私の反応を楽しむ海佳のくすくす笑いに、反撃の糸口を閃いた私は背中に回された腕を抜けて、
ベッドから降りる。
「そだ、デザートあるんだ。一緒に食べよ?」
「え、今・・・? 後でいいよぉ。」

 

 

 

 

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