Vier mädchen その2


「みのちゃん、今日はホントありがとね。 お父さんもすごく参考になったって。」
「んーん。いいよ。 どれもすっごい美味しかったし。 あれで試作品でしょ?」
そんな会話をしながら、お店から少し離れた家に向かう。
営業時間からはパートさんが来るから手伝わなくていいって言われたので、この後はみのちゃんと遊んじゃお♪
えへへ。 お父さんもたまには気が利くんだなー。

今日の試食はパスタ2種類とパフェ2種類。
1人前ずつ食べた訳じゃないけど、わたしはお腹いっぱい。
みのちゃんはわたしよりもいっぱい食べるから、もしかしたら足らなかったかも。
「みのちゃんは、どれが一番美味しかった?」
「んー・・・私は、最後に食べたキャラメルソースのバナナパフェかなー。」
少し高い位置にある横顔に問いかけると、みのちゃんは少し視線を虚空に彷徨わせて答えた。
「だよねー! バナナってチョコと相性が良いけど、キャラメルソースでも美味しかったよね。」
わたしと意見が合って、少し嬉しい。

「うんうん! それにさ、一緒に付いてたマシュマロみたいの?がすごい美味しかった。」
「みのちゃん、あれは今流行りのギモーヴだよー。」
お父さんに教えてもらった知識を披露するなら今しかないでしょ!
「ん、マシュマロとは違うの?」
小首を傾げるみのちゃんの、ミディアムボブの髪がするりと頬にかかる。
「えと・・・形?かな? ・・・あ、でも、マシュマロは英語で、ギモーヴはフランス語なんだよ。」
「てコトは同じ物? うわー、すっごい気になる! なに? どう違うの?」
二人で疑問を疑問で返しあって、なんだか収拾がつかなくなってきちゃった。
「みのちゃん、今日お父さんに聞いておくからさ、そしたら明日学校で教えてあげるから。」
教えてあげるから。
だから、今はギモーヴよりわたしの事を考えて。

「はーい、着いたー。」
繋いでいた手を離してポーチから鍵を取り出し、玄関を開けて門の外にいるみのちゃんを手招き。
蒸し暑かった6月の空の下に比べれば、家の中はクーラー無しでもいくらか涼しく感じる。
「お邪魔しまーす。」
自宅にみのちゃんが遊びに来るって言うだけで、わたしの心臓が独り歩きしてしまいそう。
「みのちゃんがうちに来るの久々だねー。」
3階のわたしの部屋へトントンと階段を上りながら、後ろを振り返る。
「そだね。 春休みのお泊りの時以来だね。」
そこにあるのは、もちろんみのちゃんの優しい微笑み。

「うん。今日は準備もしてないし、さすがにお泊りは無理だけどね。」
ドアを開けて、まだ高い日が差す自分の部屋にみのちゃんを招き入れる。
「お邪魔しますー・・・ あ、カーテン変わった?」
バッグを肩から降ろすなり指差されたのは、夏らしい色にと先日変えたカーテン。
「うん! 水色っぽい方が涼しげかなーって思って。」
「そっか。 この前来た時と部屋の印象が違うなーって思ったけど、夏はこっちの方がいいんじゃない?」

みのちゃんは、わたしのいろんな事に気が付いてくれる。
それはわたし自身だけじゃなくて、周りの事とか、わたしが気付いてない事とか。

「えへへ。 みのちゃん、ありがと。ね。」
そう言って抱き付いたまま、二人で床に腰を下ろす。
「ふふ。どうしたの、かすみん。 改まって。」
みのちゃんの穏やかな微笑みは、いつもわたしの心をときめかせる。
「んーん。 みのちゃん、大好き。」
自然と顔が緩んでみっともない顔になっちゃうから、わたしはみのちゃんの肩に顔を埋めてぎゅっと力強く
しがみついた。


 

 

 

 

その1へ     その3へ