Vier mädchen その3


「もう・・・かすみん、今日はいつもより甘えん坊じゃない?」
肩に乗った私の頭を撫でる手と同じように、その声も優しい。
「折角二人きりなんだもん。 ・・・ダメ?」
登下校中でも、学校でも、どこかに遊びに行っても、みのちゃんは外でくっつかれるのが嫌みたいだから、
いつもわたしは我慢してるのに。
「んー・・・かすみんのその顔、ズルいよ。」
掌ほどの距離から見上げるわたしの視線から逃れるように、みのちゃんの目がちらちらと動く。

「なんで?」
理由なんてわかってる。
でも、みのちゃんに言って欲しいから、わたしは敢えてそう囁いた。
「・・・可愛いから。 ダメって言えなくなっちゃうじゃん。」
相変わらずわたしから目を逸らしたままのみのちゃんが口を尖らせてぽつりと呟いた。
その言葉だけで胸の奥がきゅぅんと音を立てて、ストーブに当てられたギモーヴのように甘く溶けてしまう。
「えへへ。やったぁ♪」

みのちゃんの上体を支えている腕を取って体重を預けると、いとも簡単にわたし達は床に雪崩れてしまう。
「あ、ちょっとぉ・・・」
腰に腕を回されたまま、圧し掛かったわたしを非難するようにみのちゃんが困った声を出す。
シャツの内側に籠ったみのちゃんの香りが私のドキドキを膨らませていく。
「みのちゃん、いい匂いする・・・」
キャミソールに口を押し当てて強く息を吹き込むと、その箇所だけが呼気で熱くなって、みのちゃんは身体を
小さく捩る。

「しないよー。 今日は朝から暑かったから、汗かいてるかもだし・・・」
わたしの肩に手を掛けながらも押し退けないのは、してもいいって事だよね?
「そーかな? 大丈夫だと思うけど、直接かいでみる?」
「やーだっ! しなくていいよっ!」
キャミの裾をちらりと捲り上げると白いお腹が速い呼吸に上下していて、みのちゃんはそこを守るかのように
身体を丸めて抵抗してくる。

「するのっ! みのちゃんの匂い好きなんだもん!」
そんな姿勢で私の侵攻を防げるはずがないじゃない。
だって裾は背中側にもあるし、寧ろみのちゃんは背中の方が弱いことくらい知ってるもの。
「やぁーーーだぁ!」
わたしが丸くなったみのちゃんの背中をシャツごと露わにすると、今度はビクンと体を震わせエビ反りになる。

暴れているせいか、みのちゃんの肌が微かに汗ばんできて、頬擦りするなだらかな曲面が少し熱い。
「そんなに暴れないでよー。 かげないからー。」
わたしの願いも空しく、みのちゃんは激しく体をばたつかせて逃げようとする。
そんなことしたら、余計に汗かいちゃうよ?

と、その時、悪戯好きな神様が天才的な閃きをわたしに与えてくれた。
「かすみん・・・ん!? や、ちょっ! あははははははははは!」
友達の間でも関節が柔らかいんじゃないかって評判のわたしの指で、みのちゃんの背中をそっと撫でると、
外にまで聞こえてしまいそうな大きな笑い声が響き渡った。

脇腹を少し強めに指で揉むようにすると、みのちゃんの笑い声と暴れ方がさらに激しさを増す。
「やっ! あははははは、だめ、やめっ、あっはははは!」
「あはー。 みのちゃんすごーい。」
わたしは自分の興奮にも気付かぬまま、みのちゃんの背中に爪を這わせ、あばらに食い込ませるように脇腹を
指で抉る。
「ひーーーーーっ! あはっ、か、かすみん、あははは、お、怒るよっ! あははははは!」
くすぐったさに身悶えるみのちゃんの忠告も入ってこないほど、わたしはひたすら指を動かし続けた。

 

 

そして気づいた時には、激しく呼吸を繰り返しながらぐったりと俯せに身を投げ出しているみのちゃんが、
わたしの目の前に横たわっていた。
「あ・・・みのちゃん! ごめんっ!大丈夫!?」
どう見ても大丈夫じゃなかったけど、わたしにはただそう声を掛ける事しかできなかった。

「ばかっ・・・はぁっ、やりすぎ、はぁ、だよ・・・はぁ、はぁ・・・」
目尻と口角を窓から入るまだ高い日差しに煌めかせながら、どこか虚ろな目でみのちゃんはそう答えた。
暴れるうちにずり上がったキャミの下の、しっとりと湿り気を帯びた肌の白さが目に痛い。
「ごめんね・・・みのちゃん。 でも、かいでいい?」
せっかく汗かいたんだもの。 いいでしょ?
「もぅ・・・勝手にして。」
そうして諦めたみのちゃんを、わたしは余すことなく堪能しました♪

みのちゃん、大好きっ!


 

 

 

 

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