Vier mädchen その18★


私がドイツ語を勉強したのは、中学2年から3年にかけての2年間。
父は5か国語を、母は4か国語を話せるなかで、二人とも話せない言語のひとつがドイツ語であることが、
学び始めるきっかけだった。
表向きは父母が話せない外国語を学習する事で後々役に立てるようにという理由だったが、私の本当の目的は
文兎にも一緒にそれを会得させることにあった。
父母に聞かれたくない話を堂々と、文兎と話せるようになれるのが嬉しかった。
家の中で気兼ねなく話が出来るという事が・・・嬉しかった。

「 Würden Sie mich umarmen . 」
私を見上げる文兎の瞳が、僅かに揺らいだ。
「文兎。 ここなら日本語で大丈夫だから。」

正座している文兎を膝立ちにさせ、迎え入れるように手を広げる。
泡だらけの身体を、冷たい身体へ無遠慮に押し付けて背中に手を回し、文兎の願いを叶えてあげる事にする。
優しい泡ごしに当たる一際大きなおっぱいに、文兎が私の背中にも手を回したせいで埋もれてしまいそう。

「紫鈴様・・・」
耳元で囁かれた私の名前。
その声は、家族が私を呼ぶのより、ずっと温かくて優しくて、切ない響きだった。

「文兎、いつもと違う香りがする。 香水変えたの?」
私を包むボディーソープとは異なるフローラルな香りの元を探り出し、文兎の項に頬を擦り付ける。
首を伸ばしたことでより深く密着する身体が、お互いに吸い付いているように感じた。
「さすが紫鈴様。 お気付き頂けたなら、わたくしもつけた甲斐があるというものでございます。」
私の問いに答えず耳元で微笑んだ文兎に対し、私は柔らかな皮膚に爪を立てる事で返答を促す。

「んっ・・・仰る通りでございます。 紫鈴様の為に、入手困難と言われておりますクロエを少々。」
バラの香りがベースのようだけど強くなく、それは優雅に私の鼻腔をくすぐる。
「車の中ではこの香りはしなかったけど?」
もう一度大きく深呼吸してみるけど、それはやはり初めて文兎から立ち上る香りだった。
「はい、ですから・・・ 湯浴みの為にと思いまして、先程つけました。」
耳にかかる髪を揺らす吐息が、すこし丸みを帯びてきている。

「そう。 文兎には似合う香りね。 いいと思う。」
「はぁ・・・光栄でございます。」
褒められたのが嬉しいのか、私の肩にそっと頭が預けられる。
またふわりと、新たな文兎の香りが私を捕えようとする。

「さ、そろそろ身体を洗うのを続けて。 冷えてしまうから。」
そんな文兎を敢えて突き放して告げた私に、妖しい微笑みが投げかけられる。
「畏まりました。 では、わたくしがスポンジとなりましょう。」

足元に置いていたボディーソープのボトルからドバドバと噴出した白い液体をスポンジで素早く泡立てた文兎は、
それを自身の深い胸の谷間に塗りつけると、再び私を抱き締めてきた。
「んっ・・・」
文兎のおっぱいに私のおっぱいが柔らかく潰されて、二人の身体の間から泡が湧きあがる。
「んふっ・・・あ、文兎・・・」
肺から空気が押し出されるほどの圧迫に戸惑う私を潤んだ瞳で見上げながら、文兎は上半身を左右にくねらせ
泡を塗り広げる。

「はぁ・・・紫鈴様、いかがでございますか?」
私よりも柔らかくたっぷりとした質感のおっぱいが、目の前でぐにぐにと形を変えながらボディーソープを
擦り込むのが、なんだかたまらなく卑猥に見えて鼓動が速くなってきてしまう。
「文兎・・・ こんなの、誰に教わったの? 他の家政婦?」
脳に血液が送られ過ぎて、思考が上手く回らない。
それでも懸命に冷静を装い、質問で切り返す。

「それは・・・本人との約束でございます故。」
誰か他の人間が関係しているという事が、私の脳に火花のように弾けた。
呼吸を忘れそうになるような衝撃に、私は思わず文兎の肩に噛み付く。
「あっ!」
「私より、仲間の方が大事?」
痛みのせいか、私を抱き締める腕に僅かに力を込もり、今度は円を描くように体を動かす文兎のおっぱいが、
私のおっぱいを翻弄するように絡まってくる。

「め、滅相もございません・・・」
「誰? 言いなさい。」
ちかちかと胸の奥で音を立てる赤黒い何かを抑え込むために、囁いた文兎の耳たぶにも歯を立てる。
ガリッと、ピアスの金属にエナメル質が当たる嫌な音がした。


 

 

 

 

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